ゆるかわの日記

暮らしに役立つかもしれないことを書きます

小説

公開社内恋愛

みんな知っていた。二人が付き合っていることを。正確には一人だけ分かっていない男性社員がいたが、そいつはとにかく鈍感であからさまなのに気づいていなかったのだが、とは言え、それ以外のみんなは気づいていた。 鈍いといえば、当事者である二人も鈍い。…

夕焼け発電

原子力が初めから危険だと思われてなかったように、夕焼け発電も純粋な技術革新だと思われていた。それでも一部の人間は勘付いていたかもしれない。キュリー夫人の生涯や、デーモンズコアのような悲劇。多分おそらく同じことが起きるのではと。 人類は夕焼け…

夫婦を養う

振り込まれた通帳を見ながら思わずため息をつく。そんなにないなあ、今月もこの金額でどうにかしなきゃとヨシキは思った。家に帰る途中、少し足りない分は何か働かなきゃと、社会貢献者募集のサイトをスマホで見てみる。サユリと家族を持つことになってから…

パンを登る

いつからだろうか。パンを登っている。登れるぐらいだから、とても大きい。まるで入道雲のように空高く大きなパンをよじ登っている。ロッククライミングの要領で、パンに手をかけ足をかけ、上を目指す。 長い時間登り続けるので、腹も減る。ちぎっては食べる…

男性番号

氏名や出身地やありとあらゆる属性で差別が行われてきた我が国。それならいっそのことと、一人一人に意味のない番号を割り当てて、それを呼び合うことにした。男性番号法と呼ばれる法律が国会で成立。本当は女性も同じように番号をつけるはずだったのだが、…