ゆるかわの日記

暮らしに役立つかもしれないことを書きます

男性番号

氏名や出身地やありとあらゆる属性で差別が行われてきた我が国。それならいっそのことと、一人一人に意味のない番号を割り当てて、それを呼び合うことにした。男性番号法と呼ばれる法律が国会で成立。本当は女性も同じように番号をつけるはずだったのだが、政治的な配慮とのことで男性のみが対象となった。


法の施行にあわせ、現実拡張の技術を応用し、1人1人の男性の頭上に番号を可視化させた。大きく浮かび上がった番号はその男性が何者であるかといったことが些細なことだと言わんばかりに、何よりも存在感を示していた。番号は本来持つ機能を遺憾無く発揮した。大きい順や小さい順、奇数の班や偶数の班といったことが簡単にできる。そこには競い合うことも優劣をつけることも、仲良しグループや馴れ合いも存在しない。数字の羅列はあらゆる意味を与えない。番号の力は平和を生み出した。


次に番号は男性たちに影響を与えた。男性たちは何か得体の知れない力を感じ、一度気になりだすと、果たしてこの番号というものは何か、さらにはその番号には実は意味があるのではと考えるものもいた。その中で規則正しく、何より美しい並びとしてゾロ目の番号が人気になった。その番号を持つものは人気者だと錯覚に陥った。特徴の無い番号はつまらない人間だと思われた。


そのうち番号が近いもの同士、似たような番号同士などあらゆる組み合わせで徒党を組むようになった。特に素数の番号の男性たちは自分たちが誰よりも優れた存在であると宣言し、他の割り切れる番号の男性たちを劣っていると排斥した。国が数字には意味が無いことを国民に伝えつづけても、男性たちはその番号に固執した。結局法律は廃止され、番号で呼ばれることも、男性の頭上に表示することもなくなった。


元々番号には意味が無かったので、そのうち誰も他人の番号など気にしなくなったが、男性たち自身はそうではなかった。誰にも見えなくても、ずっと心の中に刻み込まれていた。番号は男性にとって大切なものであり、決して差別すべきものではないと。

 

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