ゆるかわの日記

暮らしに役立つかもしれないことを書きます

夫婦を養う

振り込まれた通帳を見ながら思わずため息をつく。そんなにないなあ、今月もこの金額でどうにかしなきゃとヨシキは思った。家に帰る途中、少し足りない分は何か働かなきゃと、社会貢献者募集のサイトをスマホで見てみる。サユリと家族を持つことになってからあまり働いていない。今の世の中、働くのは子育てが終わった世代で、それまでは子育てに専念できるのだ。


それでも生活はかつかつなので、できる範囲で働く。気分転換にもなるし、いつかはちゃんと働くためにも何かちょっとでもやった方が良い。毎月振り込まれる金額があればどうにかなる。自分たちを支えてくれる「親」には感謝しなければならない。どこの誰だか分からなくても。


ケイコは今月も無事振込が行われていることを確認した。1人で生活しているからあまりお金の心配は無いが、それでもばかにならない額だ。これで「あの子たち」も無事に今月も生活できるだろう。本当に「親」になったようなそんな気持ちになる。


少子高齢化が進んだことで、子育てをしない人々が増えた。結婚をしない人、子どもを持たない人、既に子育てが終わっている人。そうなると、日常で子どもと接することが無くなくなった。同じような人たち、世代は異なる次の世代へ目を向けようにもいないのだからしょうがない。ケイコもそうだった。


何となく結婚したかったし、子どもも欲しかったが、そうしなかった。一人暮らしで両親と暮らすことも、室内犬や猫を飼うこともせず、それこそ何となくだが、夫婦を養うことにした。


自分より若い世代で、子どもがいるようで子育てのストレスに悩ませている。夫婦共々、本を読んだり映画や音楽が好きだが、運動はあまりしないらしい。


カタログをめくるように気に入った夫婦を選び、毎月生活費を工面した。本当は何か生活に必要なものをと、ダンボールに詰めて送りたいのだが、結局相手が何を欲しいのか分からないので多少素っ気なくても振込にしている。


おそらく、見返りが来ることも、「孫」が遊びに来てくれることもない。独りよがりといえばそれまでだ。ただ、街中でふと家族連れを見た時に、もしかしたらこの夫婦なのかなと思うと、少しだけどきどきするのだ。

 

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